今回は歌が上手なボーカリスト、特に発声が上手な男性ボーカリストの声をタイプ別に解説していきます。
歌の上達の近道は、上手いボーカリストの真似をすることだと良く言われます。
確かにそうだなと思ったきっかけがありました。
以前、モノマネシンガーの方達と一緒に食事をしてそのままカラオケに行くというルーティーンをよくしていた時期があったのですが、その方々はモノマネだけでなく歌自体がとても上手でした。モノマネをしながらもピッチは完璧で発声も上手い。そして「モノマネは原曲キーが基本です」と皆さんおっしゃっていました。
では、なぜそのハイレベルなモノマネシンガー達は歌が上手いのかというと、とても研究熱心で耳が良いんですね。
耳が良いというのは、歌声を聴いてどうやって出しているのかを分析できるということです。そして分析した声に近い音を出せるようになります。
それだけ研究熱心でもあるんですね。
歌が上手くなりたい人は是非、自分の好きなボーカリストの歌を聴き込んで、どう出しているのかを研究してみてください。
という事で今回は、タイプの違うボーカリスト3人を選んで分析してみました。
・Taka(ONE OK ROCK)=ロック
・藤原聡(Official髭男dism)=ポップス
・黒田俊介(コブクロ)=R&B
上記のようにジャンル分けすると、よりイメージがしやすいかもしれませんね。
それでは、さっそく解説していきたいと思います。
タイプ別ボーカリスト3選
1 Taka(ONE OK ROCK)
まずは、海外でも活躍する人気ロックバンド”ONE OK ROCK”のTakaさんです。
ロックバンドのボーカルらしくライブでは荒々しさが増しますが、声は安定しているようです。
声質は少しだけ枯れた感じの硬い声で、低音の倍音は少なめです。
声帯の締まりが強く、息の量が少ないです。
Takaさんの声の美味しい部分は歪んだ高音ですね。高音部分の独特な歌い方や切り裂くようなシャウトをカラオケで真似してみた方は多いのではないでしょうか?
強いミドルボイスの感覚を掴み始めた頃でも出しやすい声なので、割と真似しやすいのではないかと思います。
Takaさんのように歌うには、声帯をしっかり閉めて横隔膜から息を力強く出して歌います。そこで声帯がしっかり閉まっていると、息の成分が少なく硬い声が出ます。エッジボイスの練習をするのも効果的ですね。息の力をさらに強めると少し歪みます。
ただし、喉に力が入ってしまうと高い声が出せても連続して出しているうちにハイラリンクス状態(喉仏が上がってしまい喉が閉まり、声が出にくくなる状態)になってしまいますので注意が必要です。
ハイラリンクスを防ぐ方法はこちらの記事をご覧ください。
響きのポイントは額から頭にかけて、声を前に当てるイメージです。
・息の量を少なくして高く硬いトーンで歌う
・どの音域でも息の量は少なく、体で響かせるのではなく頭で響かせて歌う
・常に声帯閉鎖を強く、声帯の閉まった部分から息をしっかり出す
2 藤原聡(Official髭男dism)
2019年にブレイクした”Official髭男dism”のボーカル藤原さんは、ライブでのピッチがとても良く、約2時間のライブ終盤になっても高音を枯れずに出しています。
Official髭男dismのライブのPAを担当している方が僕の知り合いなのですが、”Official髭男dism”のメンバーは全員プロ意識が相当高く、アーティストとして本当にかっこいいと言っていました。特に藤原さんは常に声の出し方を研究されているそうです。
藤原さんは地声が軽くて息が多めです。ミドルボイスも多用していますので、低音から高音まで軽やかに伸びていく印象の声質です。
地声を張らずに優しく出し、中音域からミドルボイスを多用していると枯れづらくなります。慣れてきたら呼気を強くして響きを増やし、声量を大きくしていきましょう。実際の藤原さんはかなり声量があります。
低音の地声部分は息の成分が少し多ように感じられますが、ミドルボイスになると息の量は少なくなくなっていきます。地声部分で息を多めにして低音の倍音を少なくしていくと、高音になっても声質があまり変わらなく聞こえるようになります。ミドルボイスになるとどうしても切り替わった感が出てしまう人は、そこを意識して是非チャレンジしてみてくださいね。
低音の倍音が多い方は、高音になるとどんどん低音の倍音が減っていって声質が軽くなっていきます。稀に高音でも低音の倍音を保っている人がいますが、実際に生声を聴くとやはり高音は軽くなっていたり、息が多めでスカスカになっていたりします。
藤原さんの歌声は、癖がほとんど無く聴きやすい声なのですが、しいて言うなら歯擦音(サシスセソを発音する時、上下の前歯の隙間から出る音)が強めです。声量があり呼気圧も強めなボーカリストは歯擦音が強い傾向にあります。
藤原さんのように歌うには、喉に力を入れずに頬骨をしっかり上げ、横隔膜から息で声を前に飛ばすように歌う意識を持つと良いと思います。
響きは眉間のあたりと鼻腔共鳴を意識してみてください。
ハミングで鼻腔共鳴を意識して、まずはハミングで声量を抑えて”Official髭男dism”の曲を歌ってみてください。
地声〜ミドルボイスが上手く繋がるようになったら、その音をそのまま声に変換していくと掴みやすいと思います。
・柔らく軽いトーンで歌う
・低音での息の量は多め
・低音から高音まで喉付近には力を入れず、声を前に飛ばすように意識する
3 黒田俊介(コブクロ)
コブクロの黒田さんは、”ONE OK ROCK”のTakaさんや”Official髭男dism”の藤原さんとは違ったタイプで、太い中低音が特徴です。
ライブでも変わらず、力強く説得力のある歌声です。
低音では倍音豊かに深く声を響かせていますが、高くなるにつれて声帯閉鎖が強まります。そうすると声に芯が出てきます。その声を全身で響かせているので高音でもとても太く力強い声が出るんですね。
ミドルボイスを使うというより、地声のままA4付近の高音まで持っていってるように聞こえます。
黒田さんのような声を出すには、低音では息を少し多めに出し、口を大きく開けて軟口蓋を開き、頭と胸で広く響かせるように意識をすると近い声になると思います。
どの音域でも横隔膜から息をしっかりと出し、横隔膜から上の上半身全体で声を響かせます。
高音は息の量を減らし、声帯をしっかり閉じて呼気を強くして出します。
胸から上の力をしっかり抜くと響きが良くなます。力んで硬くなっていると響きづらいので気をつけましょう。
がなり声の出し方についてはこちらで練習方法を説明しています。
・低音での息の量は多く
・口を大きく開け、常に上半身をしっかり響かせる
・高音では横隔膜から強く息を出し、体全体を響かせる
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このタイプの違う3人の歌い方を自分なりに消化出来れば、かなりのバリエーションの歌を自在に歌えるようになると思います。
是非、自分の好きなボーカリスト・上手いと思うボーカリストの歌声をじっくり研究して、真似てみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。